こばやしのヒト

ばすぷすん工房・代表の浜崎誠太郎さんは、美大時代に廃車のバスを改装した小屋で暮らしていました。「ばすぷすん」。聞いたことのない響きを持った屋号の由来は、住んでいたバスが“ぷすんっ”と止まっていたから。バス小屋での暮らしは、浜崎さんにとって創作の原点です。

美大時代は作品づくりに没頭し、大学院を卒業したあと、浜崎さんは宮崎県小林市に移住します。その後、ばすぷすん工房のデザイン・制作・製造といった工房のお仕事は徐々に 軌道に乗り、工房は大きくなりました。

しかし浜崎さんは「やりたいことはまだまだたくさんある」と語ります。小林市へ移住して約10年。10人の職人さんを抱える技術者集団になったばすぷすん工房の物語は、まだ始まったばかりです。

いきなりなのですが、鉄って固いし、加工するのは大変そうなイメージがあります。

浜崎 意外に柔らかいんですよ。加工するのも、簡単ですよ。ちょっと実際にやってみましょう。

お願いします!

しばし浜崎さんの作業を見守る

あっという間に鉄の棒材にカーブが描かれていく

編集部もやってみた(写真は立花)

こんなふうに加工されていくんですね。想像していたよりも、軽々と加工されていく様子に驚きました。

浜崎 慣れですからね。慣れれば、できるようになりますよ。

さっそくですが、最初に「ばすぷすん工房」を始めるまでのお話を聞いてもいいですか?

浜崎 かなりてげてげ(宮崎の方言で「たいがい」)なんですけど、最初は大学3年生のときに、学校の設備を使って商品をつくったんです。その頃、2001年くらいはちょうどヤフオクのサービスが始まって1、2年ぐらいの頃でした。自分がつくった鉄の商品を試しに出品してみたところ、結構売れて、それから今まで続いています。出身は福岡で博多区の生まれなんですけど、大学は愛知県立芸術大学に彫刻で入って、2004年に大学院を卒業しました。

浜崎誠太郎さん

中学や高校のときから美術を志していたんでしょうか?

浜崎 もともとは幼稚園の頃から油粘土で遊ぶのが好きだったのもありますが、高校時代は剣道部だったんです。よく知らずに特待の剣道部がある高校に入ってしまって、稽古をさせてもらえませんでした。同じ1年生の特待生が稽古している横で、あずき色のジャージを着て洗濯したり、「僕らいつになったら稽古させてもらえるのかなぁ」とか同級生と話しながら走ったりしていました(笑)。



浜崎 誠太郎さん

1977年、福岡県博多区出身。2000年、大学在学中に鉄細工を作って販売を始める。2001年、国際瀧冨士賞を受賞。2002年、wool in wool 2002受賞(kubota氏と共同出展)。2004年、愛知県立芸術大学大学院彫刻科修了。同年、ばすぶすん工房を個人事業登録。