小林人


有機農法で「おいしさ」にこだわった野菜づくりに挑んでいきたい

 「畑には色々な生き物がいた方がいいと思う。豊かな生態系の中でこそ、たくましく、美味しい野菜が育つんじゃないかな」。

堀研二郎さん(30)=北西方=は、市内でも珍しい「有機農家」。少量多品目の野菜を栽培し、個人に直接、採れたての野菜セットを配達・販売する若手農家だ。

食べ物の「安心安全」が注目される中、農薬や化学肥料を一切使わない有機農業への関心も高まっている。その上で、堀さんがこだわるのは「おいしさ」だ。

「おいしい、と言ってもらえる野菜を作ってこその農家。試行錯誤の日々だが、有機で“おいしい”野菜づくりに挑んでいきたい」。

堀さんは、有機農業ならではの技術を駆使し、害虫や病気への対策を取る。例えば「輪作」という手法。同じ土地で、周期的に栽培する農作物を変えることで土の栄養バランスを保ち、病気などの問題を防ぐ。

良い影響を与えあう農作物を近くに植える「混植」も有機農法の基本。成長を促進したり、害虫が嫌がる、もしくは天敵が増える農作物を組み合わせて育てていく。堀さんの畑が多品目の野菜であふれているのは、「輪作」や「混植」を巧みに取り入れているからだ。

「農業には、とにかく真面目で甘えがない人」と評するのは妻の三千代さん。「主人の野菜は、エネルギッシュだとよく言われます。私もその野菜の味にほれ込んだファンの一人です」。

堀さんは、中学生のころから「地球にやさしい男になる」と公言するほど自然に興味を持って育った。小林高校卒業後、環境保全について学ぶため、東京農業大学に進学。学んだ中で、特に影響を受けたのが「農業の多面的機能」という考え方。農業が食の提供だけでなく、景観や水資源の保全、憩いの場など、多くの機能を持つことを知った。

卒業し、野菜の販売を行う企業に就職。1年後、農家への転身を決意し、退職。岐阜に移住し、愛知県や長野県の有機農家に通い、有機の考え方や技術をひたすらに吸収した。3年目になると「あの農地でよくここまで」と、農作物を褒められるまでになった。

「充実した3年間。技術だけでなく、遊び心を持ったり、消費者とのつながりの大切さを学びました」。

平成23年、帰郷し、新規就農した。現在、畑1㌶と竹林0・3ヘクタールに、年間40~50品目を栽培。その日に採れた10~14種類の旬の野菜をセットにして、直接個人に配達している。

「ホリケンの野菜いいね」と言ってくれる人も増えてきた。手ごたえもあるが、課題も多い。故郷の自然や人にやさしい持続可能な農業が目標。「地球にやさしい男」の歩みは止まらない。(「広報こばやし」平成27年6月号掲載)