小林人


うちでしか味わえないナチュラルチーズを届けたい。

 東方の国道沿いにある有限会社ダイワファーム。酪農を営む大窪和利さんが代表を務めるこの会社は、先ごろ開催されたナチュラルチーズの全国大会で金賞を受賞。3位入賞を果たした。ナチュラルチーズは、種類ごとに独特の製法があり、繊細な風味と個性ある味わいが楽しめる。同社は、そのチーズの製造・販売を行う県内で唯一の企業だ。大窪さんのチーズは、県内外のレストランで使用されるなど好評を博す。

会社を立ち上げ初めに手がけたのはソフトクリーム。こだわりの自家製牛乳を原料に、豊富なトッピングも手伝い評判になった。 大窪さんの挑戦はこれに留まらない。10年前、チーズの製造・販売を決意。同様の事業を手がける湯布院の酪農家に学んだ。
チーズの製造は難しい。温度や発酵具合の管理が肝心だ。牛乳の質や気候の変化から、微妙な温度調整の感覚が求められる。作り手の技術が試される商品だ。
大窪さんは、失敗を繰り返しながらもチーズと向き合ってきた。「難しいから面白い。失敗は落ち込むが、工夫改善しながら常に前向きに取り組んだ」と話す。県外の多くの仲間と切磋琢磨し研究を重ねた。

コンテストに出品したのは「ロビオーラダイワ」と「トーマダイワ」。特に前者はウォッシュタイプという種類に分類され、独特の癖が特徴だ。熟成にかける期間は約2ヶ月。さらに2日に一度は塩水で表面を洗う。大窪さんが手塩にかけて作ったこのチーズは、独特の癖が少なく食べやすくなっていた。同社の熟成庫で独自の進化を遂げたのだった。

2年に一度開催されるコンテストに6年前から挑戦している大窪さんだが、入賞は一度もない。チーズを作り始めて10年。多くの人に美味しいという評価を受け満を持して出品した。大会には全国から64工房、148点が出場。結果、チーズの本場、北海道勢が上位を占める中で3位。さらに「トーマダイワ」も入賞した。予想外の好成績に「妻が一番喜んだ」と常に支えてくれた妻の律子さんに満面の笑みだ。

それでも「賞を励みにもっと頑張りたい」と意気込む。現在は、新たな種類の商品化に取り組む日々。チーズは作り手の性格が出るという。「チーズ作りは生きがい」と常に前を向き、挑戦し続ける大窪さん。彼のチーズをぜひ味わっていただきたい。 (「広報こばやし」平成24年1月号掲載)